ノロウイルス感染症
急性胃腸炎の代表的な原因ウイルス感染症の診断・治療
ノロウイルス感染症とは
ノロウイルス感染症は、ノロウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎です。秋から冬にかけて多く発生し、感染力が非常に強いため、家族内や集団感染を起こしやすいことが特徴です。
全年齢で感染しますが、特に小児と高齢者では重症化しやすく、脱水症状に注意が必要です。潜伏期間は通常24-48時間で、症状は1-3日程度持続します。
ノロウイルスの特徴
- 非常に強い感染力
- 少量のウイルスでも感染が成立
- 環境中で長期間生存
- アルコール系消毒薬に抵抗性
- 秋から冬に流行のピーク
主な症状
🤢典型的な症状
- 激しい嘔吐
- 水様性下痢
- 腹痛・腹部けいれん
- 発熱(37-38℃程度)
😷全身症状
- 脱水症状
- 全身倦怠感
- 頭痛
- 筋肉痛
感染経路
経口感染
- 汚染された二枚貝
- 汚染された野菜・果物
- 汚染された水
接触感染
- 感染者との接触
- 汚染された環境
- ドアノブ・手すり
飛沫感染
- 嘔吐時の飛沫
- 塵埃感染
- 空気中のウイルス
診断・検査
ノロウイルス感染症の診断は、主に症状と流行状況、接触歴から臨床的に行われます。典型的な症状パターンと季節性、周囲での発生状況を総合的に判断します。
🔍臨床診断
- 食事内容、下痢・嘔吐などの症状、腹痛の状態など
🧪検査法
ノロウイルス抗原検査(便検査)
便中のノロウイルス抗原を検出する迅速検査です。結果は当日中に判明しますが、感度は完全ではありません。
保険適用: 3歳未満、65歳以上の方
自費診療: 3,800円(高校生以上対応)
RT-PCR検査
より精度の高いウイルス遺伝子検査ですが、結果まで数日要します。集団感染時などに行われることがあります。
自費診療: 10,000円(結果まで3-5日)
治療法
ノロウイルスに対する特効薬はないため、症状を和らげる対症療法が中心となります。
💧対症療法(メイン治療)
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水分・電解質補給
最重要:脱水予防のため、こまめな水分摂取が必要です。経口補水液やスポーツドリンクが効果的です。重篤な脱水では点滴が必要になります。
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安静・休養
十分な休養を取り、体力の回復を図ります。急激な動作は避け、横になれる環境を整えます。
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食事療法
症状が落ち着くまでは消化の良い食事を心がけます。おかゆ、うどん、バナナなどから始めます。
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薬物療法
止痢薬は原則使用しません。制吐薬や整腸剤を症状に応じて使用することがあります。
⚠️ 重症化の兆候(受診の目安)
- 持続する激しい嘔吐で水分摂取ができない
- 血便や血性嘔吐がみられる
- 高熱(38.5℃以上)が続く
- 強い脱水症状(尿量減少、口渇、皮膚の乾燥)
- 意識レベルの低下
- 高齢者や基礎疾患のある方の場合
予防法
手洗いの徹底
- 流水と石鹸で30秒以上の手洗い
- トイレ後、食事前、調理前後は必須
- アルコール系消毒薬は効果限定的
食品衛生
- 二枚貝は中心部85-90℃で90秒以上加熱
- 流行期は生の二枚貝を避ける
- 野菜・果物は十分に洗浄
家族内感染の予防
🏠感染者の隔離
- 可能であれば個室で療養する
- トイレを分ける(困難な場合は使用後に消毒)
- タオルや食器の共用を避ける
- 洗濯物は分けて洗浄する
⚕️看病時の注意
- 看病する人を1人に限定する
- マスクと手袋を着用する
- 看病後は手洗いを徹底する
- 衣服に嘔吐物が付着した場合は即座に着替える
🔄回復後の注意
- 症状回復後も1週間程度はウイルス排出が続く
- 手洗いを継続して徹底する
- 調理担当者は特に注意が必要
- 保育園・学校復帰は症状消失後24-48時間経過してから
よくある質問
Q. ノロウイルス感染症はどのくらいで治りますか?
A. 通常1-3日で症状は改善しますが、完全回復まで1週間程度かかることもあります。高齢者や免疫力の低い方は長期化することがあります。
Q. 家族が感染した場合、どう対処すべきですか?
A. 可能な限り隔離し、看病する人を限定してください。手洗いの徹底と次亜塩素酸での環境消毒が重要です。
Q. 仕事や学校にはいつから復帰できますか?
A. 症状が完全に消失してから24-48時間経過後が目安です。ただし、職場や学校の規定に従ってください。
Q. ノロウイルスワクチンはありますか?
A. 現在のところ、ノロウイルスに対するワクチンは実用化されていません。予防は手洗いと食品衛生が基本です。
